高齢者の人口と認知症の割合

日本の高齢者(65歳以上)の人口は、2020年9月時点で、約3617万人です(総務省統計局資料)。2020年9月時点での日本の総人口が約1億2856万人に対する高齢者の割合は、約28.7%になります。
日本の総人口の数が減少してきているのに対し、日本の高齢者の人数は、毎年増加しており、今後も高齢者の割合は増加していくと思われます。

 高齢になるにつれて、つきまとうのが認知能力の衰えの問題です。
平成29年版高齢社会白書(内閣府)によれば、高齢者のうちの認知症の人数は、2012年に462万人だったものが、団塊の世代が75歳以上になる2025年には700万人にも上ると言われており、高齢者5人に1人が認知症になると推計されております。

認知症になる前に

認知症となって、正常な判断をすることができなくなってしまうと、家族が本人の意思に反して財産を管理したり、処分したりすることはできません。このような状況になる前に、どのような対策をとれば良いでしょうか。意思能力が正常な状態のうちにすることができることは、代表的なものとして、以下に掲げているようにいくつかあります。なお、任意後見契約、財産管理契約及び信託については、別途、詳細な説明をする予定です。

任意後見契約

 任意後見契約とは、将来、認知症等により正常な判断をすることができなくなったときに、自身の生活の面倒や財産の管理などをしっかりと行ってもらうため、自分が正常に判断することができるうちに、信頼することができる親族、弁護士等の専門家又はNPO法人などとの間で、身の回りの世話や財産の管理に関して締結する契約であり、その契約内容に従って財産の管理等を行っていくものになります。

財産管理契約

財産管理契約とは、自分の財産等に関し、契約した内容に従って、医療や介護等の日常生活の生活支援及びそれに関する費用の支払い等、ローンの返済や不動産の管理などの財産管理を委任する契約です。施設などに入所していて外出することが困難な場合だったり、身近な親族が存在しなかったりする場合に利用されることが比較的多い契約になります。
また、任意後見契約や死後事務契約などとセットで行われることがあり、任意後見契約に基づく任意後見監督人の選任がなされるまでは、財産管理契約に基づいて管理がなされることになります。

家族信託

家族信託とは、自分が所有している財産を、信頼することができる個人や法人に委託して、自身が決めた目的等に沿って、自分の大事な人や自分自身の利益のために、管理や運用をするものになります。信託は、一次的な相続だけでなく、その後の二次相続の問題だったり、配偶者の生活費の問題だったり、柔軟な財産管理が可能であったりと、任意後見契約や成年後見制度の利用に比べて、柔軟性があります。

遺言

遺言とは、亡くなった人の最後の意思表示であり、自分の財産を誰に譲り渡すかを決めることができたり、相続分を指定したり、そのほか認知等の身分関係をすることができます。

遺言は、法律に決められた方式に従わないと効力が生じないものですので、遺言をする場合には、専門家に相談して、その要件をしっかり確認しましょう。なお、民法の改正により、自筆証書遺言(自らが自書して行う遺言)の要件が緩和されていますので、以前と比べて利用しやすいようになっています。

 早めの準備を

認知症等になって、認知能力が衰え、物事の判断をすることができなくなってしまうと、任意後見契約や信託など今まで説明した方法をいずれもとることができません。

認知症は、加齢が原因で起こる症状です。認知症になってしまっては手遅れです。ご自身の意思や望みをしっかりと実現させるためにも、将来の家族との間での争いを避けるためにも、将来のことを見据えて早い時期から、どのような方法が良いのか準備することが大事です。いずれの方法をとるにしても、専門的な知識やメリット・デメリットがありますので、一度弁護士に相談することをおすすめいたします。