遺言を書こう

うちには財産が少ないから、子供たちは仲がいいから相続でもめるはずがない、なんて安心していませんか?

安心しているのはあなただけかも知れません。

遺産分割でもめるケースは、実際は財産の多い少ないに関係ありません。

相続がきっかけで仲がよかった兄弟姉妹が骨肉の争いになって、顔も合わせたくないということになる場合もザラにあります。

また非常にお世話になった特定の親族がいたとしても、遺言を残さなければ、思った人に思った財産を残すのは不可能です。

相続では、原則として法定相続分に応じて分配することになります(寄与分の主張がありますが確実ではありませんし、調整もたかが知れています。)。

そもそも法定相続人でなければ、お世話になった方に遺産を残すことはできません。

「争」続争いをできるだけ未然に防止し、自分の感謝の気持ちなどを相続に反映させるためには遺言を残しておくことが大切です。

自筆証書遺言であれば、すぐにでも書けますよ。何度でも簡単に書き直しできますよ。

遺言を書かなきゃいけないのはどんな人?

では、遺言を書くべきなのはどのような方でしょうか。

お子さんがいない場合(配偶者と兄弟姉妹の相続のケース)

夫婦で協力して築いてきた財産が全部夫(被相続人)名義になっている場合、遺言を残さず亡くなってしまうと、財産の4分の1を夫の兄弟姉妹に渡さなければなりません。

兄弟姉妹の場合、疎遠だったり、険悪だったり、はては顔も見たことのない代襲相続人と協議をしなければならないこともあります。

こんな場合には、どんなに財産が少なくても遺言を残すべきです。

兄弟姉妹には遺留分がありませんので、「妻(夫)にすべて相続させる」という遺言だけでも、配偶者に財産を全部残すことができます。

後妻と先妻の子供が相続人のケース

自分は再婚で、先妻との間にも子がいる場合。さらに後妻との間にも子がいる場合。

自分が死亡したら、後妻と子(先妻の子、後妻の子)が相続人になります。

想像するだけで恐ろしくありませんか?

兄弟姉妹と違って、子には遺留分があります。

遺留分に配慮しながら遺言を作成しておくのが、争続を避けるためのあなたの責任です。

子供たちの仲がいい「と思っている」人

他方、あなたの子供たちは仲がいいと思っている人も要注意です。

子供たちが仲がいいのは、あなたがいるからなのかも知れません。

初めて子供たちがいがみ合うのは、あなたが亡くなってからかも知れません。

子供たちの仲を円満に保つためにも遺言は必要です。

あなたの思いを子供たちに適切に分けましょう。

お世話になった法定相続人に多く残す場合

特定の1人の子供に特に世話になった場合などは、その分、多めに相続させることで感謝の意を伝えることができます。

ただし、他の子供たちの遺留分には気をつけましょう。

特定の兄弟姉妹に相続させる場合にも同様です。

兄弟姉妹の相続の場合には、遺留分がないため、特定の1人の兄弟姉妹だけに相続させることも可能です。

内縁の妻など法定相続人以外の方に遺産を残したい場合

たとえば内縁の妻(夫)に残したい、介護でお世話になった長男の嫁に残したいといった場合など、法定相続人以外に遺産を分け与える(遺贈する)には、遺言を作るしかありません。遺言がなければ、法定相続人だけで相続財産を分配することとなりますので、法定相続人以外の方に遺産を残したくても残せないこととなります。

法定相続人がいない場合

法定相続人がいなければ、相続財産は特別縁故者(法定相続人以外のお世話になった人)と認められなければ、国に帰属することになります。

お世話になった人がいる場合や特定の団体などに寄付をしたい場合などには遺言を残す必要があります。

事業をやっている人

オーナー会社をやっている人、家業をしている人には、適切な事業承継が必要です。

適切な遺言を書きつつ、後継者を育て、他の遺留分を有する相続人に対するフォローをしていくことが必要になります。

不動産を持っている人・不動産がいちばん大きな財産の人

日本人は、住宅にこだわります。

なんとか預金や退職金をはたいて住宅ローンを返し終えた段階で安心してしまいます。

その後はボーナスステージとばかりにお金を使う。

そうすると、亡くなったときには、高価な不動産とわずかな預金だけというケースがよくあります。

さあ、残された相続人はこの不動産をどう分けましょう? 最終的には一生懸命守ってきた自宅を売り払わなければならないかも知れません。

遺言があれば、もっと合理的な分け方をすることができることがあります。

家族が自分の財産を把握していない人

財産の分け方以前の問題として、自分にどのような財産があるか、自分以外は誰も把握していない方が増えています。

ネット銀行やネット証券、仮想通貨など、第三者にはわかりようがない財産の種類も生み出されています。

財産目録を明らかにするという趣旨の遺言も、相続人としては非常に助かります。

家族が把握していない相続人がいる人(前妻の子や隠し子など)

人には言えない秘密のひとつやふたつはあるものです(よね?)。

でも、秘密を墓場まで持っていっては、困るのは相続人です。

家族の知らない相続人が後から出てきたという場合(隠し子など)、遺言を遺さなければ、「子」として平等の相続分を主張されることになります。

遺留分の問題はありますが、遺言であなたの思う適切な分配をしておくのは、あなたの最期の責任です。

生前に特定の人に多額の贈与をしている人

自分の通帳から多額のお金が出ているといった場合、そのお金がどうなったのかでもめるケースは掃いて捨てるほどあります。

よくあるのが、被相続人と一番身近であった人が、他の相続人から「あなたが勝手にくすねた!」と主張されること。

生前に贈与したのであれば、その旨を遺言などで伝えておかないと、もらったほうも証明のしようがないことがあります。

この贈与を「特別受益」として調整されることを防ぐために「持戻し免除の意思表示」も併せてしておけば、よりあなたの思いが伝わります。

なお、贈与税の申告は忘れずに。

将来が不安な相続人がいる人

相続人の中に、障害を持っていたり、孤独な境遇であったりと、「こいつを遺して死ぬわけにいかない」と不安になる人がいるケースもあるでしょう。

そうはいっても、あなたはいつかこの世を去ります。

そんなとき、少しでもその人のために財産を残してあげる、それができるのが遺言です。

財産の分け方だけではなく、そのような遺言を遺した背景や思いについても一緒に書いておいてあげましょう。

きっと思いは伝わります。

財産がほとんど「ない」人

うちには財産がないからもめるはずがない?

まったくそんなことはありません!

遺産が100万円でも数十万円でも、もめるときはもめます。

分けるものがないときほど、分け方を指定しておくべきなのです。

要するに「全員」

ここまで、遺言を書いた方がいいケースをあげてきましたが、お気づきでしょうか?

そう。要するに、「遺言を書かなくていい人」はいないのです。

さあ、いますぐ遺言を書きましょう!

明日、何があるか分からないのですから。

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