身内の方が亡くなったら。
突然のことに何も手につかないかもしれません。何もしたくないと思うかもしれません。
でも、身内が亡くなったそのときから、しなければならないことがたくさんあります。
「悲しんでいる暇もなかった」という感想を持つ方もいらっしゃいます。

亡くなったらしなければならないこと。これを見ながら一つずつクリアしていきましょう。

身内が亡くなったら

まず通報

最近は独居の高齢者も増えており、ご自宅での孤独死も増えていますね。
久しぶりに訪問したら亡くなっていた、という場合、亡くなった原因がわかりませんのでまずは110番に電話して警察を呼びましょう。
ご同居の方が突然亡くなることもあります。
その場合でも不審死を疑われる可能性があります。亡くなっていることがわかってもまずは119番に電話しましょう。

その後、医師に死亡診断書(または死体検案書)を書いてもらいます。
病院で亡くなった場合には、主治医が死亡診断書を書いてもらえます。

死亡届の提出

医師に作成してもらった死亡診断書を、7日以内に本籍地、死亡地、届出人の所在地のいずれかの市町村役場に死亡届とともに提出します。火葬埋葬許可申請もしてください。
必要なもの:届出人の印鑑(朱肉使用)

行政の届け出

代表的な手続きをお伝えしますが、これ以外の手続きが必要な方もいらっしゃいますので、お住まいの市役所のホームページ等に記載されている行政に関係する手続き一覧をご覧になりながら、手続きをしていきましょう。

世帯主の届け出

世帯主が亡くなった場合、14日以内に新しい世帯主を、戸籍課に届け出る必要があります。
必要なもの:届出人の本人確認資料

印鑑登録証、住民基本台帳カードの返還

亡くなった方の印鑑登録証、住民基本台帳カードを戸籍課に返納してください

個人番号カードの返納

市の窓口に、「個人番号カード返納届」を添え、マイナンバーカードを返納してください。

年金

亡くなった方が国民年金に加入していたけれどもまだ受給していなかった場合「国民年金資格喪失届」を保険年金課に届け出てください。
必要なもの:年金手帳、印鑑

亡くなった方が年金を受給していた場合、年金を止める必要があります。「年金受給権者死亡届」を年金事務所に提出してください。ただし、日本年金機構にマイナンバーが登録されている方の場合は、この届けは不要です。
特に期間制限はありませんが、受け取りすぎた年金は返還する必要がありますので、出来るだけすみやかに手続きをすることをおすすめ致します。
 亡くなった方がまだ受け取っていない年金(未支給年金と言います)がある場合、生計を共にしていた遺族が受け取ることができますので、その手続きもしてください。
 一定の要件を満たすご遺族は、以後、遺族基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金を受け取ることができますので、亡くなった方の加入していた年金事務所にお問い合わせください

健康保険・後期高齢者医療保険 

亡くなった方が加入していた健康保険組合に資格喪失届けをする必要があります。
国民健康保険の場合は、区役所の保険年金課保険係に提出してください。
また、どの健康保険組合でも葬祭費の支給がされますので、葬儀後に葬祭費の申請をすることができます。
後期高齢者医療保険加入者の場合には後期高齢者医療広域連合に資格喪失届けをすることになります。14日以内に後期高齢者医療証とともに提出してください。

 喪失届に必要なもの:亡くなった方の被保険者証、死亡を証明するもの、印鑑(朱肉使用)

 葬祭費の申請に必要なもの:印鑑、葬儀の領収証、請求書(見積書不可)又は会葬礼状※コピー可、喪主氏名(フルネーム)の記載があるもの、銀行等の口座番号の控え

介護保険

亡くなった方が介護被保険者証を持っていた場合は、保険年金課保険係に「介護保険資格喪失届」を提出してください。

必要なもの:亡くなった方の介護保険被保険者証(ご本人が持っていなかった場合、担当のケアマネが保管していることもありますのでお問い合わせください)、死亡を証明するもの、印鑑(朱肉)

ひとり親世帯となった

未成年のお子様がいらっしゃる時に配偶者が亡くなり、ひとり親世帯となってしまった場合には、ひとり親家庭等医療費助成の申請や、児童扶養手当の申請をすることができます。これらは、お住まいの区役所の保険年金課給付担当、こども家庭支援課などにご相談ください。

運転免許証の返納

亡くなった方が運転免許証を保有していた場合には、警察署に返納する必要があります。
特に期間制限等はありません

必要なもの:亡くなった方の運転免許証、死亡を証明するもの

税金の申告期限にも気をつけて

準確定申告(所得税)

相続税の前に考えなければならないのが、準確定申告。
亡くなった方が確定申告をしなければならない人であった場合、その年の1月1日から死亡日までに対応した被相続人の所得税や消費税の申告をしなければなりません。

・事業所得や不動産収入などがあった人
・不動産などの売却収入が合った人
・給与等の額が2000万円を超える人
・2箇所以上から給与所得のあった人
・源泉徴収税額や予定納税から還付を受ける人

申告期限は、相続開始から4か月以内です。翌年の3月15日までではありませんのでご注意を。
原則として相続人全員の連名で行う必要があります。

相続税の申告

相続税の申告は,相続開始から10ヶ月以内です。
相続開始から10ヶ月以内に遺産分割の話し合いが終わらなかった場合でも,法定相続分で相続した場合の分け方で仮に計算して申告する必要があります。申告漏れがあると延滞税などがかかってしまいますので注意してください。
そして,実際に遺産分割協議が成立してから4ヶ月以内に修正申告をしてください。
相続税の申告に関しては,様々な特例があり,場面によって使えたり使えなかったりしますので,専門家(税理士)にご相談してください。

預金に手をつけていいの?

身内の方が亡くなったら、通常は葬儀を行います。
ここで問題になるのが葬儀費用です。亡くなった方の預金を使って葬儀を執り行ってもいいのでしょうか?

銀行は、預金名義人が亡くなったことを知ると口座を凍結して預金がおろせなくなります。

2019年7月1日以降は改正された相続法により、預金の一部仮払い制度(上限150万円)を使えます(詳しくは下記のページへ)が、施行前はこの制度を使うことができません。

ご両親の介護をなさっていたから、ご両親のキャッシュカードをお持ちで事実上お金をおろせてしまうかも?

でも、ちょっと待って。

相続放棄の回で詳しく説明しますが、亡くなった方の預金を下ろして使ってしまうと、相続放棄ができなくなる可能性があります(単純承認)。

相続って、プラスの財産だけじゃなくてマイナスの財産も引き継ぐので、後から借金まみれだったことがわかった時に相続放棄できないと、亡くなった方の代わりに借金を返さなければならなくなってしまい大変です。

葬儀は宗教上の行為なので、葬儀費用について法律で決められているわけではありませんが、喪主が負担すると考えられていることが多いようです。
一旦立て替えた葬儀費用について、相続人全員の同意で分割の対象とすることも可能ですので皆さまでよく話し合ってください。

新しくできた預金の一部仮払い制度を利用して預金を下ろしたとしても相続放棄はできなくなる可能性があるので、借金の方がプラスの財産より多いかもしれない場合には十分注意してくださいね。

生命保険の受取人になっていませんか?

生命保険の保険金は、保険契約に基づいて支払われるものですので、民法上は「遺産」ではありません。ですので、相続放棄をしていても受け取ることができますし、遺産分割の話し合いが整わなくても受け取ることができます。
亡くなった方が葬儀費用のために保険に入っている、なんてこともありますね。生命保険の受取人になっている場合には、遺産相続の手続きからは独立して、各自受け取り手続きをしましょう。

なお、生命保険金は、相続税法上「みなし相続財産」にあたり、相続税の対象となるので、民法と相続税法の取り扱いが少し異なります。

遺言を探そう

どのようなご関係の方が亡くなったかにもよりますが、配偶者や両親兄弟など近しい身内の方が亡くなった場合、まずは、ご自宅に遺言書がないかどうか探してみてください。

遺言書が見つかった!すぐに確認だ!
と思っても、ちょっとストップ。

自宅で手書きの遺言書(自筆証書遺言)が見つかったときは、家庭裁判所に検認の請求をする必要があります。封がされている場合でも、開封しないで検認の請求をしてください。裁判所の検認期日で、裁判所の方が相続人の目の前で開封します。

自宅の中に「自筆証書遺言」がなかったとしても、公証役場に「公正証書遺言」があるかもしれません。2020年7月10日以降に遺言を書いた場合には「法務局」で保管しているかもしれません。

亡くなった方のお住まいの地域の公証役場や法務局で遺言がないか確認してみてください。亡くなった後であれば、どの公証役場や法務局でも遺言の有無を検索してもらえます(亡くなる前には検索してもらえません。)。

遺言書が見つかれば、亡くなった方にどんな遺産があるのかもわかりますし、基本的には遺産分割の話し合いも必要なくなります。

戸籍を取って相続人を調べよう

少し落ち着いたら、亡くなった方の生まれてから亡くなるまで連続した戸籍を全部取得しましょう。

相続人が誰であるかは、また別の機会に詳しくお話しますが、相続人を調べるために戸籍をすべて取得する必要があります。

死亡届を提出すると、戸籍上亡くなったことを明らかにし、除籍ができます。
まずは、その除籍を取得し、そこから遡って順番に一つ前の戸籍を取っていくという方法で取得します。

亡くなった方に認知した子や存在を知らなかった前妻の子がいたり、意外と知らなかった相続人が現れることがあります。
遺産分割協議をするにも、相続人全員の合意でなければ有効なものと言えないので、必ず、相続人全員を把握する必要があります。

戸籍が全部そろわないと、相続人全員が確定できないのです。

預金の払い戻しをする際や、不動産の相続登記手続きにも、この戸籍全部が必要になりますが、いったん全部戸籍を取得して法定相続人が把握できたら、法務局に「法定相続情報一覧図」を提出し、証明してもらうことができます。いったんこの手続きを取っておけば、今後の相続の手続きは、この証明書1枚で足りることになり、手続きが楽になります。

遺産を把握しよう

次に遺産の把握です。

遺産とは、亡くなった方が持っていたすべての財産です(一部例外はありますが。)。プラスもマイナスも遺産になりますので、トータルでプラスになるのかマイナスになるのかはどこかで見極めなければなりません。

亡くなった方の遺産が、借金まみれだったら、相続放棄を検討することになります。
相続放棄をするには、相続があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続放棄の申述」をする必要があります。「私はいらない」と言うだけでは足りません。

金融機関に先ほどの手続きで集めた戸籍を見せてあなたが相続人であることを証明すると、所定の手続きをとることで、取引履歴を開示してもらえたり、残高を教えてもらうことができます。
通帳の履歴を見ることで、どこかに返済をしていたり、どこから収入があるのかわかるので、遺産を調べるきっかけになります。

遺言が見つからなかった場合で、相続放棄をしなければ、遺産分割の話し合いをすることになりますので、何がどのくらいあるのか調べてから話し合いを始めましょう。