みなさんが借りている家の賃貸借契約には、自動更新の規定が入っているケースが多いと思います。
自動更新の場合、新しい契約書を作成することもありませんので、大家さんに特別の手間をかけているわけでもありません。
そんな場合でも更新料って支払う必要あるのでしょうか?
そんなことを争った事案が、東京地方裁判所の令和3年1月21日判決です。

【事案のポイント】

賃貸借契約が自動更新(※法定更新)されるにあたり、賃貸人が以下の契約条項に基づいて、賃借人に対して更新料(賃料1.5ヶ月分)を請求しました。

契約条項
賃借人は、賃貸借契約の更新の際に、更新料として賃料の1ヶ月分、更新事務手数料として賃料の0.5ヶ月分を支払う。

法定更新
借地借家法26条1項に基づく賃貸借契約の更新
賃貸人と賃借人の合意による賃貸借契約を更新する合意更新と対比して法定更新と呼ばれる。

借地借家法26条1項
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

賃借人は更新料の請求に対して、更新料を定める賃貸借契約書の条項は消費者契約法10条に反して無効であるため、更新料を支払う必要はないと反論しました。

消費者契約法10条
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。※民法1条2項はいわゆる信義則(信義誠実の原則)を定める規定。

第1審判決(東京簡易裁判所令和2年1月21日判決)

第1審の東京簡易裁判所は、つぎのとおり賃借人の主張を認め、消費者契約法10条に違反して、更新料の請求は認められないと判断しました。

本件の賃貸借契約書には合意更新、法定更新を問わず、賃貸借契約が更新される際に賃借人が更新料を支払う条項があるが、法定更新の場合には賃貸人と賃借人の合意が成立せず別途更新契約書が作成されるわけでもないため、賃借人が更新料を支払う合理的理由がない。また、本件の賃貸借契約書では、賃借人が法定更新の場合でも賃貸人に対し更新料を支払わなければならず、賃借人が一方的に不利益を被っていると認められる。したがって、法定更新の場合にも更新料の支払いを定める契約条項は信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものと認められるので、消費者契約法10条に反し無効である。

 

第2審判決(東京地方裁判所令和3年1月21日判決)

ところが、賃貸人が控訴した後の第2審の東京地方裁判所は、次のとおり更新料の定めは消費者契約法10条に違反するものではないと判断し、一転賃貸人の請求を認めました。

本件賃貸借契約を締結した際、賃貸人と賃借人は、合意更新であるか法定更新であるかを問わず、本件賃貸借契約を更新する場合には更新料を支払う旨を一義的かつ具体的に記載された契約書を取り交わすことにより合意したものと認められる。また、更新料の額が本件賃貸借契約の賃料額や賃貸借契約が更新される期間に照らして高額に過ぎるという事情も認められない。よって、法定更新の場合にも更新料の支払いを定める契約条項は消費者契約法10条に違反することなく有効である。※更新期間は2年

 

まとめ

この判決によると、更新料を定める条項自体はは賃貸借契約が法定更新される場合にも有効であると判断されました。ただし、更新料が高額過ぎると消費者契約法10条に無効になる余地もあることになります。

疑問に思ったら、まずは弁護士に相談するようにしましょう。