川崎の弁護士伊藤諭です。
さて、一部界隈ではよく話を聞くようになってきたけれども、まだまだナゾの多い制度「マイナンバー制度」の足音が近づいてきています。
この間の弁護士会の研修をもとに少し問題提起してみたいと思います。
マイナンバーってそもそもなんだ?
マイナンバーとは国民1人1人が持つ12桁の番号のことをいいます(と下のリンクに書いてあります。)
マイナンバー-マイナンバー制度が、はじまるとどうなるの?:政府 …
といっても正直ピンと来ませんよね。
要するに税金を取りやすくするとか、年金事務を楽にするとか、お役所仕事が軽くなったりとか…
まだまだ本日(H27/09/11)現在未定ですが、行政手続きで住民票の添付がいらなくなったり、消費税の軽減税率に利用できたりなんかもあるとかないとか?
いずれにしても、そういうお上の仕事を楽にして差し上げる制度です。
いま私たちがしなければならないことってあるの?
多くの方は特にすることはありません。
平成27年10月から11月頃にかけて(自治体によって異なります)「通知カード」というものが皆さんに世帯ごとに簡易書留郵便で送られます。
(川崎市ウェブサイトより)
送られる住所は、住民票上の住所です。
このカードそのものは、身分証明書になりません。あくまで個人番号をお知らせするものです。
平成28年1月からは、希望者は個人番号カードを発行してもらえます。
取りに行くかどうかはあくまでも任意です。これを発行してもらった場合、通知カードは回収されます。
顔写真がついてますので、これは身分証明書として利用できます。これがあれば身分証明書として使うためだけに原付免許を取得する必要はありません。
で、問題は、住民票上の住所で通知カードを受け取ることができない人です。
たとえば、東日本大震災によって避難してきている人。たとえば、DV被害などによって逃げてきている人。
そのような方たちのために居所登録制度というものが用意されています。
居所登録制度って?
・ 東日本大震災による被災者
・ドメスティック・バイオレンス(DV)、ストーカー行為等、児童虐待等の被害者(以下「DV等被害者」といいます。)の方で、住民票を残して、別の場所(居所)にお住まいの方
・長期間にわたって医療機関・施設等に入院・入所することが見込まれ、かつ、入院・入所期間中は住所地に誰も居住していない方
について、平成27年9月25日までに住民票がある市区町村役場に、現在住んでいる居所を届け出れば、そこに通知カードを送ってくれます。郵送の場合でも9月25日必着です。
時間がない? そうなんです。とりあえず、これを見たら急いでください。
なにそれほんとにおいしいの?
被災者や入所者入院者はいいと思うんです。
でも、DV被害者って今住んでいるところを住民票上の役所に届け出て平気なの?という疑問が、前回の弁護士会の研修で出てきました。
講師の方がいうには、「役所に居所がバレるリスク」と「DV加害者に個人番号がバレるリスク」のどちらが危険かという価値判断が必要だと。なるほど。
DV被害者の住所を役所の人がポロッと加害者にしゃべってしまう、何らかの形で盗み見られてしまうという事故は最近よく報道されます。
これはそもそも役所が知っているから漏れるのであって、そもそも現在実際に住んでいるところについて、誰にも話さなければ本人から以外は漏れようがないわけです。
他方、通知カードって、本当に是が非でも受け取らなければいけないものか(居所がバレるというリスクを冒してまでという意味)ということを考えてみてもいいと思うのです。万が一、個人番号が住民票上の住所にいるDV加害者にバレたとしても、それ単独で悪用されるケースは少ないだろう(他の身分証を加害者がもっている場合は別。)。再発行の手段もあるわけだし。また、勤務先等に番号を伝える必要がある場合をのぞいて、あんまり今のところ不都合が思いつかない(もちろん思いつかないだけで、具体的な不都合があるかどうかは始まってみないとまだ分かりません)。
さらにもっといえば、被後見人の通知カードを後見人の立場でどうしても受け取らないといけないのかという点も疑問になってきます。
受け取ったら管理上のリスクは負うことになる反面、誰も受け取らず役所に返送されてしまったとしても、後見人の責任が何かあるかというとあんまり思いつきません。
最終的には、リスクとの兼ね合いでそれぞれでご判断いただくほかないのですが、ちょっと違った観点の気付きをもらったので、ここに書いてみました。
さあ、どうなるんでしょうね?この制度。
マイナンバー制度における「居所登録制度」について考えてみました。https://www.s-dori-law.com/sdoriblog/ito/841
Posted by 市役所通り法律事務所 on 2015年9月11日
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