川崎(じもと)の弁護士 伊藤諭 です。
報道などでご存じの方も多いと思いますが,ついに非嫡出子(婚外子)の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定について違憲と判断する最高裁大法廷決定が平成25年9月4日に出ました。
これまではどうだったか
現在の民法の規定では,子供が相続人になるときは,それぞれ平等に分けますが,その中に,非嫡出子がいるときは,嫡出子の相続分の2分の1とするとされています。
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
(略)
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
つまりこういうことです。
Aさんは妻Bさんとの間にDさんEさんという子どもがいました。
しかし,Bさんと結婚する前に,Cさんという女性との間でFさんという子供ももうけていました。
AさんはFさんを認知していましたが,Cさんとは結婚していませんでした。
Aさんが遺産2,000万円を遺してなくなった場合,
 非嫡出子相続分
Fさんの相続分はDさんやEさんの相続分の2分の1ということになります。
Fさんにとっては,自分に何ら責任がないにもかかわらず,父親の遺産を他の兄弟に比べて半分しかもらえないという結論になってしまうのです。
オヤジ(A)が母ちゃん(C)と結婚してさえしてくれればこんなことにはならなかったのですが(非嫡出子として生まれた後で,父母が結婚すると「準正」といって,嫡出子の身分を取得することができます。)。
今後どうなるか
しかし,今回の最高裁決定を前提すると,
非嫡出子相続分(最高裁後)
Fさんは,DさんやEさんと同じ相続分を持つことになります。
今回の最高裁判所の決定では,
この非嫡出子の相続分に関する規定は
平成13年7月当時には既に憲法違反(14条1項)だった
といっています。
 つまり,
少なくとも平成13年7月以降に亡くなった方の相続では,非嫡出子と嫡出子を平等に扱わなければならない
ということになるのが自然な考え方です。
最高裁の歯止め
しかし,この12年の間に,おそらく何万という非嫡出子がからんだ相続が行われているはずで,とっくに協議が終わったものも多いでしょう。
さらに,相続を受け取った人がその後亡くなって,再び相続が発生していることも多いと思われます。
これらを全部ひっくり返して遺産分割をやり直す,となると大きなパニックになりかねません。
そこで,今回の決定では,
「本決定の違憲判断は,…他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。」
つまり
すでに決まった相続について蒸し返すことはしません
と(やや乱暴なまとめですが)言っているのです。
この点について,かえって不平等な結果を招くのではないかとか,理論的に整合しないなど専門家からの反対意見が多く聞かれますが,私は,秩序の安定にという面から,結論としてはやむを得ないものと評価します。
トラブルを避けるためには
非嫡出子の存在は,父が亡くなった後で相続の調査をしたときに発覚すると言うことがよくあります。
父親が死ぬまで妻以外との間の自分の子供の存在を家族に黙っている,いわゆる「隠し子」というケースです。
往々にして,行き場のない家族の怒りを親族間でぶつけ合うという,泥沼の相続劇が繰り広げられます。
非嫡出子の側も,自分が好んでそういう処遇に生まれてきたわけではありません。
親は選べないわけです。
父親本人は亡くなっているわけですから,その後の修羅場を目撃することはありません。
あとは知らぬ存ぜぬ。
こんなことでは家族に気の毒です。
やはり,父親としてはしっかりと遺言を遺して,自分のしてきたことの最期の後始末をつけることが,非嫡出子も含めた家族に対する誠意でしょう。
なお,遺言を遺したとしても,遺留分の権利は各相続人はもっています。今回の決定により,遺留分の割合も変わりますので,十分に念頭に置いて遺言を遺すようにしてください。

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