2025年6月1日、刑法が一部変わりました。
たかが一部改正、されど一部改正。
今回の改正は、明治40年(1907年)に我が国に刑法が公布されてから(翌年施行)、初めてとなる刑罰の種類の変更となりました。
今年6月1日以降の刑事事件で適用されることとなります。
改正の概要
今般の改正前の刑法
(懲役)
第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
2 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。(禁錮)
第十三条 禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、一月以上二十年以下とする。
2 禁錮は、刑事施設に拘置する。
今般の改正後の刑法
(拘禁刑)
第十二条 拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする。
2 拘禁刑は、刑事施設に拘置する。
3 拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。第十三条 削除
(下線部は筆者)
改正のねらい
上記の改正前後の条文を見れば分かるとおり、拘禁刑では、「改善更生を図るため」必要な作業を行わせること等と規定されました。
これにより、
◆ 受刑者の必要性に応じた作業の実施
◆ 作業と指導を柔軟かつ適切に組み合わせた処遇
◆ 作業を含む受刑生活への動機付けの強化
が可能となるとされています。
では、なぜこのような改正が行われたのでしょうか。
それは、これまでの懲役刑、禁固刑で明らかとなった課題があったからです。
懲役刑での課題
懲役刑は、刑務作業が必須であり、かつ、それが刑の本質的な要素であるとされていました。そのため、受刑者は一定の時間をそれに充てる必要がありました。
ところが、改善更生や社会復帰のために、必要な指導などを行う時間を確保することが困難な場合があったのです。
禁固刑での課題
禁固刑は、改正前の条文を見れば分かるとおり、「刑事施設に拘置する。」としか書かれておらず、刑務作業は必須ではありません。
そのため、改善更生やスムーズな社会復帰に有用な作業であっても、本人が希望しない限り、実施させることができませんでした。
受刑者もいずれ社会復帰する
刑事施設に収用された受刑者は、刑を終えれば社会に復帰します。
しかし、刑を終え、いきなり社会で生活しなさいといっても、塀の中と外では環境が大きく違います。
もちろん、これまでの制度でも社会復帰に向けた支援は行われていましたが、なかなか十分とはいえない面もありました。
その結果、社会になじめず、再犯に繋がってしまうということもありました。
刑事事件を担当する中でそのような方がいたことも少なくありません。
そこで、立ち直りに必要な処遇を充実させ、再犯に至らないようにと、今回の改正となったのです。
拘禁刑のもとでの処遇
処遇調査の充実
それぞれの受刑者の特性を把握するため、アセスメント機能を強化します。
矯正処遇過程の新設
それまでの犯罪傾向がどの程度進んでいるかという点のみからの評価をやめ、受刑者の年齢、資質、環境その他の事情等を踏まえた多軸評定に基づいて受刑者の特性を把握し、それに応じた処遇類型(矯正処遇過程)を中心に処遇を行います。矯正処遇過程は全部で24種類あるとされています。
例えば、薬物依存傾向のある受刑者であれば、依存症回復処遇過程に基づいて、基礎的作業(刑務作業)などを行いつつ更正プログラムが実施されることになります。
矯正処遇の充実と社会復帰支援の充実
矯正処遇と社会復帰支援とを充実させ、受刑者の改善更生、社会復帰に向けた動機付けを高めていくとともに、社会生活を営むための支援を実施していくこととされています。
(法務省矯正局の資料:https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00164.html)
おまけ
受刑者の作業により生産された物品は、CAPIC(https://www.e-capic.com/)から購入することができます。
また、このような商品を集めた展示会が各地で行われる場合もあり、目にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。
商品を購入すると、売上の一部は、犯罪被害者支援団体の活動に活用されているそうです。こちらも皆様是非。
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